行錄(3)「非但騎虎頭、亦解把虎尾」(虎の頭に乗ったばかりか、虎の尾まで捕まえていたのです)「臨済録」より

2023-07-04

古典 臨済録

虎の頭に乗ったばかりか、虎の尾まで捕まえていたのです

 

こんにちは、暖淡堂です。

「行錄」の3回目です。

大愚のもとから戻った臨済は、黄檗の問いに答えます。

そしてついに虎のヒゲを引っ張ります。


臨済録の原文全文は以下のリンクからご確認ください。 

「喝!!」の声が戦乱と混沌の世に響いた 臨済の生きた時代


  

師辭大愚、卻回黃檗。

師は大愚のもとを辞して、黃檗のところに帰った。


黃檗見來便問、這漢來來去去、有什麼了期。

黃檗は師が来たのを見て、お前は行ったり来たりしているが、いつになったらそれをやめるのか、と問うた。


師云、祇為老婆心切。

師は言った、ただただ老婆心切のおかげです、と。


便人事了侍立。

そして、帰着の挨拶などを済ませて、黄檗の傍らに立った。


黃檗問、什麼處去來。

黃檗は問うた、どこに行って来たのだ、と。


師云、昨奉慈旨、令參大愚去來。

師は言った、先日ご指示いただいたとおり、大愚のところに行っておりました、と。


黃檗云、大愚有何言句。

黃檗は言った、大愚はどんな言葉で教えたのか、と。


師遂舉前話。

師は大愚のところでのやり取りを話した。


黃檗云、作麼生得這漢來、待痛與一頓。

黃檗が言った、どうにかしてあの男を連れ出して、一撃を喰らわせてやりたいと思っているのだ、と。


師云、說什麼待來、即今便喫。

師は言った、喰らわせてやりたいなどと言うのなら、今すぐに喰らえばいい、と。


隨後便掌。

そして後ろに従いながら平手打ちした。


黃檗云、這風顛漢、卻來這裡捋虎鬚。

黃檗は言った、この風顛漢め、帰ってきて虎の鬚をひっぱるのか、と。


師便喝。

師はそこで一喝した。


黃檗云、侍者、引這風顛漢、參堂去。

黃檗が言った、侍者よ、この風顛漢を引っ張って、参堂に連れて行け、と。


後、溈山舉此話、問仰山、臨濟當時、得大愚力、得黃檗力。

後、溈山がこの話を持ち出し、仰山に問うた、臨済はそのとき、大愚の力を得たのであろうか、それとも黃檗の力を得たのであろうか、と。


仰山云、非但騎虎頭、亦解把虎尾。

仰山は答えた、虎の頭に乗ったばかりか、虎の尾まで捕まえていたのです、と。



 

臨済は、黄檗が大愚に一撃を喰らわせたいものだと言うのを聞いて、それならこの場で喰らえと平手打ちをします。

黄檗は臨済の変化や成長をそこに見たのでしょう。

侍者に、臨済を参堂に連れて行かせます。

そのあとに溈山と仰山とのやり取りが書かれています。

臨済は虎の頭に乗っただけではなく、尻尾も掴まえたのだ、と仰山は言います。

その後の臨済禅の発展の兆しを、そこに見ていたようです。


*****


「臨済録」現代語訳は、全文の推敲を終えたら関連する地図、臨済の生きた時代の年表などと合わせて書籍にする予定です。

 

臨済録原文全文リンク

 

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