示衆(25)「所以達六種色聲香味觸法皆是空相、不能繫縛此無依道人」(このように、六種、つまり色声香味触法がみな空相との見地に達した無依の道人は、束縛することなどできないのだ)「臨済録」より

2023-04-28

古典 臨済録

 

こんにちは、暖淡堂です。

「示衆」の25回目です。

仏には神通力があるというが、修行の先にはそのような力が得られるのでしょうか。

そんなことを質問した修行僧がいたのかもしれません。

それに対して、真の神通とは何かを、臨在は説きます。



臨済録の原文全文は以下のリンクからご確認ください。 

「喝!!」の声が戦乱と混沌の世に響いた 臨済の生きた時代


  

爾道、佛有六通、是不可思議。

君たちは言う、仏に六通、すなわち神足通、天限通、天耳通、天命通、他心通、漏尽通の能力あり、これは不可思議である、と。


一切諸天、神仙、阿修羅、大力鬼、亦有神通。

さて、すべての諸天、神仙、阿修羅、大力鬼、これらもまた神通を持っている。


應是佛否。

まさにこれらも仏ではないのか。


道流、莫錯。

諸君、間違えるな。


祇如阿修羅、與天帝釋戰、戰敗領八萬四千眷屬、入藕絲孔中藏。

あの阿修羅は天帝釈と戦い、戦に敗れて八万四千の眷属を引き連れて、ハスの茎の藕絲(ぐうし:ハスの茎から取れる細い糸)ほどの小さな穴の中に隠れたという。


莫是聖否。

こんな神通力をみせることができたからといって、仏と同じとしてよいのか。


如山僧所舉、皆是業通依通。

今私が述べたものは、みな因果応報による業通や、呪術、秘薬などによる依通やらというもので、いずれもまやかしだ。


夫如佛六通者、不然。

そもそも仏の六通というものは、そんなものではない。


入色界不被色惑、入聲界不被聲惑、入香界不被香惑、入味界不被味惑、入觸界不被觸惑、入法界不被法惑。

色界に入って色に惑わされず、声界に入って声に惑わされず、香界に入って香に惑わされず、味界に入って味に惑わされず、触界に入って触に惑わされず、法界に入って法に惑わされないものだ。


所以達六種色聲香味觸法皆是空相、不能繫縛此無依道人。

このように、六種、つまり色声香味触法がみな空相との見地に達した無依の道人は、束縛することなどできないのだ。


雖是五蘊漏質、便是地行神通。

色受想行識の五蘊からなる身体でさえ、この大地の上での神通を示したものであるのだ。



 

天帝釈と戦った阿修羅は、ハスの茎の中にある糸ほどの細さの穴の中に、大勢の眷属とともに隠れたそうです。

それはまさに神通力。

しかし、そんな力を見せたからといって、それは仏の姿でしょうか。


色声香味触法がみな空であると見極めた者。

それを実現した無依の道人は、何ものにも束縛されない。

そうなれば、色受想行識の五蘊からなる身体を持って生きている私たち自身が、神通の現れだ。

そう臨済は言います。


*****


「臨済録」現代語訳は、全文の推敲を終えたら関連する地図、臨済の生きた時代の年表などと合わせて書籍にする予定です。

 

臨済録原文全文リンク

 

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