こんにちは、暖淡堂です。
「示衆」の25回目です。
仏には神通力があるというが、修行の先にはそのような力が得られるのでしょうか。
そんなことを質問した修行僧がいたのかもしれません。
それに対して、真の神通とは何かを、臨在は説きます。
臨済録の原文全文は以下のリンクからご確認ください。
爾道、佛有六通、是不可思議。
君たちは言う、仏に六通、すなわち神足通、天限通、天耳通、天命通、他心通、漏尽通の能力あり、これは不可思議である、と。
一切諸天、神仙、阿修羅、大力鬼、亦有神通。
さて、すべての諸天、神仙、阿修羅、大力鬼、これらもまた神通を持っている。
應是佛否。
まさにこれらも仏ではないのか。
道流、莫錯。
諸君、間違えるな。
祇如阿修羅、與天帝釋戰、戰敗領八萬四千眷屬、入藕絲孔中藏。
あの阿修羅は天帝釈と戦い、戦に敗れて八万四千の眷属を引き連れて、ハスの茎の藕絲(ぐうし:ハスの茎から取れる細い糸)ほどの小さな穴の中に隠れたという。
莫是聖否。
こんな神通力をみせることができたからといって、仏と同じとしてよいのか。
如山僧所舉、皆是業通依通。
今私が述べたものは、みな因果応報による業通や、呪術、秘薬などによる依通やらというもので、いずれもまやかしだ。
夫如佛六通者、不然。
そもそも仏の六通というものは、そんなものではない。
入色界不被色惑、入聲界不被聲惑、入香界不被香惑、入味界不被味惑、入觸界不被觸惑、入法界不被法惑。
色界に入って色に惑わされず、声界に入って声に惑わされず、香界に入って香に惑わされず、味界に入って味に惑わされず、触界に入って触に惑わされず、法界に入って法に惑わされないものだ。
所以達六種色聲香味觸法皆是空相、不能繫縛此無依道人。
このように、六種、つまり色声香味触法がみな空相との見地に達した無依の道人は、束縛することなどできないのだ。
雖是五蘊漏質、便是地行神通。
色受想行識の五蘊からなる身体でさえ、この大地の上での神通を示したものであるのだ。
天帝釈と戦った阿修羅は、ハスの茎の中にある糸ほどの細さの穴の中に、大勢の眷属とともに隠れたそうです。
それはまさに神通力。
しかし、そんな力を見せたからといって、それは仏の姿でしょうか。
色声香味触法がみな空であると見極めた者。
それを実現した無依の道人は、何ものにも束縛されない。
そうなれば、色受想行識の五蘊からなる身体を持って生きている私たち自身が、神通の現れだ。
そう臨済は言います。
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