示衆（４３）「殺父害母、出佛身血、破和合僧、焚燒經像等、此是五無間業」（父を殺し母を害し、仏身から血を出させ、和合僧を破り、経象を焼き捨てる、これが五無間業である）「臨済録」より

問、如何是五無間業。

修行僧が質問した、五無間業とはどのようなものでしょうか、と。

師云、殺父害母、出佛身血、破和合僧、焚燒經像等、此是五無間業。

師は答えた、父を殺し母を害し、仏身から血を出させ、和合僧を破り、経象を焼き捨てる、これが五無間業である、と。

云、如何是父。

僧が聞いた、父とはなんでしょうか、と。

師云、無明是父。

師は答えた、無明が父である、と。

爾一念心、求起滅處不得、如響應空、隨處無事、名為殺父。

君たちの一念心の、起こるところと消え去る先とを知ろうとしても知ることができず、ただ空に応じて響いているようで、どんなところにいても無事であること、これを父を殺すというのだ。

云、如何是母。

僧が質問した、母とはなんでしょうか、と。

師云、貪愛為母。

師は答えた、貪愛が母である、と。

爾一念心、入欲界中、求其貪愛、唯見諸法空相、處處無著、名為害母。

君たちが一念心を起こし、欲界の中に入り込んで、その貪愛を求めても、ただそこに諸法空相のみを見てとり、どこにも執着しないこと、それを母を害めるという。

云、如何是出佛身血。

僧が質問した、仏身から血を出すとはどのようなことでしょうか、と。

師云、爾向清淨法界中、無一念心生解、便處處黑暗、是出佛身血。

師は言った、君たちが清浄法界の中に向かって、一念心を生ずることなく、そのままどこでも真っ暗なままでいる、それを仏身から血を出すというのだ、と。

云、如何是破和合僧。

僧が尋ねた、和合僧を破るとはどのようなことでしょうか、と。

師云、爾一念心、正達煩惱結使、如空無所依、是破和合僧。

師は答えた、君たちの一念心が、煩悩や執着が、空でありなにかに依存しているものではないと見抜くこと、これを和合僧を破るという、と。

云、如何是焚燒經像。

僧が問うた、経像を焚焼するとはどのようなことでしょうか、と。

師云、見因緣空、心空、法空、一念決定斷、迥然無事、便是焚燒經像。

師は言った、因縁は空、心は空、法も空と見て、一念決定し、なにものからも抜きん出て事なきこと、それを経像を焚焼するというのだ、と。

大德、若如是達得、免被他凡聖名礙。

諸君、もしこの見解に達しうることができたなら、凡や聖などの名に邪魔されるなどということはないだろう。