行錄(14)「金牛昨夜遭塗炭、直至如今不見蹤」(金牛は昨夜炭で塗りつぶされてしまい、まったくその痕跡も見ることはできません)「臨済録」より

2023-07-16

古典 臨済録

臨済録原文全文

 

こんにちは、暖淡堂です。

「行錄」の14回目です。

臨済は三峰の平和尚のところを訪ねます。

平和尚は臨済の修行の程度を試そうとします。

どのようなやり取りになったでしょうか。



臨済録の原文全文は以下のリンクからご確認ください。 

「喝!!」の声が戦乱と混沌の世に響いた 臨済の生きた時代


  

到三峰。

師は三峰に至った。


平和尚問曰、什麼處來。

平和尚が問うて言った、どこから来たのか、と。


師云、黃檗來。

師は答えた、黃檗のところから来ました、と。


平云、黃檗有何言句。

平和尚は言った、黃檗はどのような言葉で教え導いているのか、と。


師云、金牛昨夜遭塗炭、直至如今不見蹤。

師は答えた、金牛は昨夜炭で塗りつぶされてしまい、まったくその痕跡も見ることはできません、と。


平云、金風吹玉管、那箇是知音。

平和尚は言った、金風が吹く玉管の音は、誰が聞いているのか、と。


師云、直透萬重關、不住清霄內。

師は答えた、その者は万重の関門を通り抜け、蒼空さえも突き抜けています、と。


平云、子這一問太高生。

平和尚は言った、そなたの問いは大いに高すぎるな、と。


師云、龍生金鳳子、衝破碧琉璃。

師は言った、龍が生んだ金鳳子は、碧い琉璃を突き破ったのです、と。


平云、且坐喫茶。

平和尚が言った、まずは座ってお茶でもいかがか、と。


又問、近離甚處。

また平和尚が尋ねた、今はどこから来たのか、と。


師云、龍光。

師は答えた、龍光のところからです、と。


平云、龍光近日如何。

平和尚が言った、龍光は最近はどんな様子だったか、と。


師便出去。

師はそこで出て行った。


 

臨済は、師である黄檗の教えを、その痕跡を見ることもできない、と言います。

それは形を変え、臨済自身の中に流れ込んだものということかもしれません。

黄檗の教えが、笛に流れ込む爽やかな風であれば、きっと清々しい音を出すはず。

その笛の音を聞いている者はどこにいるのか、と平和尚は尋ねます。

その問いに対し、臨済は、龍が産んだ鳳は、碧瑠璃を突き破ってしまった、と答えます。

何ものにも囚われることなく、自由に飛んでいるぞ、ということでしょうか。

臨済自身による、自らの修行の到達点の宣言のように読み取れます。


*****


「臨済録」現代語訳は、全文の推敲を終えたら関連する地図、臨済の生きた時代の年表などと合わせて書籍にする予定です。

 

臨済録原文全文リンク

 

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