こんにちは、暖淡堂です。
今回は「上堂」の2回目です。
河北を治めていた藩鎮の一つ、成徳府(成徳軍節度使)主の王常侍に依頼されて行われた説教の続きです。
この日、臨済は王常侍から説法を依頼され、修行僧たちが集まる堂で上座に上ります。
臨済が話し始めようとすると、麻谷という僧が出てきて、「大悲千手眼、那箇是正眼」という問いを発します。
大悲千手眼とは腕が千本あり、それぞれの手のひらに目がある観世音菩薩のことです。
麻谷は、この観世音菩薩にあるたくさんの目のうち、どれが本物か、どれがまっすぐに見ている目なのか、という意味の質問をしたわけですね。
臨済と麻谷とは、この大悲千手眼の観世音菩薩をめぐって、どのようなやりとりをするでしょうか。
臨済録の原文全文は以下のリンクからご確認ください。
師、因一日到河府。
師はある日、河北府に出かけた。
府主王常侍、請師升座。
そこで河北府の知事王常侍が、師に説法を願った。
時麻谷出問、大悲千手眼、那箇是正眼。
師が壇に上ると麻谷が前に出て質問した、大悲千手の観音菩薩の手のひらの眼は、いったいどれが真っ直ぐに向き合う眼なのでしょうか、と。
師云、大悲千手眼、那箇是正眼、速道速道。
師は言った、大悲千手の観音菩薩の手のひらの眼は、いったいどれが真っ直ぐに向き合う眼なのか、さあ言え、さあ言え、と。
麻谷拽師下座、麻谷卻坐。
麻谷は師を引っ張って座から下ろし、かわりに麻谷自身が座に着いた。
師近前云、不審。
師は近づいて言った、やあ、こんにちは、と。
麻谷擬議。
麻谷はすぐに応じることは出来なかった。
師亦拽麻谷下座、師卻坐。
師はまた麻谷を座から引きずり下ろし、かわりに座に着いた。
麻谷便出去。
麻谷はすぐに堂から出て行った。
師便下座。
師も座から速やかに下りた。
ここでの臨済と麻谷とのやり取りは、くるくると視点が変わります。
この視点の移動を始めたのは麻谷なのですが、その移動の速度も頻度も臨済にかないません。
むしろ身軽さは臨済の方がずっと上。
そのことに気づいた麻谷はさっさと退場します。
麻谷が気づいたと知った臨済もその場を去ります。
残された僧たちは、二人のやり取りに、なにを見たでしょうか。
私たちは、ここからなにを見てとるべきでしょうか。
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