上堂(4)「師云、賓主歷然」(主人と賓客との差は歴然としているではないか、と師は答えた) 「臨済録」より

2023-01-18

古典 臨済録

臨済録原文全文と現代語訳

 

こんにちは、暖淡堂です。

「上堂」の4回目。

臨済は、集まっている僧たちと、「喝」についての問答を三通り行います。


一つ目は、臨在が上堂してすぐ。

一人の僧が師の前に出てきます。

臨在はすかさず一喝します。

前に出てきた僧は、今の喝は、自分を試すためのものでしょうか、と問います。

臨在は、お前自身はどこに落ち着くのか、と、尋ねます。

そこで僧は一喝を返します。

この僧は、この時、もうなにかを得ているようです。


二つ目は、僧が仏法の根本の教えを尋ねた時。

臨在は一喝を与えます。

そして、その一喝で、僧はなにを得たのか、探りを入れます。

草賊大敗、再犯不容、と僧は答えます。

草賊は大敗けだ、再び犯したら容赦しないぞ、と。

おそらく、たった一度きりの機会に得たものを、いつまでもいじくり回すなという意味かもしれません。

そう言い得た僧の言葉に、臨在は一喝します。

もしかしたら、臨在は嬉しかったのかもしれません。


三つ目は両堂の首座が互いに交わした一喝について。

一人の僧が、二人の首座が行った喝について、どちらが主でどちらが客か、そう尋ねます。

臨在は、二人の喝の主と客は明白だ、と言います。

そして、それが知りたかったら、堂中にいる二人の首座に直接聴いてみなさい、と。

それだけ言って、臨在は座から下ります。

さて、臨在はここで、なにが言いたかったのでしょうか。

この二つの主客を、質問した僧の視点で見たために主客が別れたのだ、ということもあるかもしれません。

あるいは、僧に向かって、主はお前だけだろう、と言っているのかもしれません。


これらのやり取りは、ただの記録ではありません。

臨済の「喝」について、この記述から読み取るべきものがあります。

臨済の相手となった僧たちがそれぞれ得たものを、考えながら暮らしてみませんか。


臨済録の原文全文は以下のリンクからご確認ください。 

「喝!!」の声が戦乱と混沌の世に響いた 臨済の生きた時代


  

上堂。有僧出禮拜。師便喝。

師が上堂した。一人の僧が前に出て礼拝した。師はすかさず喝した。


僧云、老和尚莫探頭好。

僧が言った、老師、私の頭の中を探ったということでなければよいのですが、と。


師云、爾道落在什麼處。

師は言った、お前はそれがどこに落ち着くというのだ、と。


僧便喝。

僧はそこで喝した。


又有僧問、如何是佛法大意。

また一人の僧が質問した、佛法の根本の教えをお聞かせください、と。


師便喝。

師はそこで一喝した。


僧禮拜。

僧は礼拝した。


師云、爾道好喝也無。

師は、お前は今の一喝を好いものと思わなかったか、と言った。


僧云、草賊大敗。

僧は答えた、草賊は大敗しました、と。


師云、過在什麼處。

師は、過ちはどこにあったのか、と尋ねた。


僧云、再犯不容。

僧は答えた、再び過ちを犯すのは許されないぞ、と。


師便喝。

師はすかさず一喝した。


是日兩堂首座相見、同時下喝。

この日両堂の首座が顔を合わせると、同時に一喝した。


僧問師、還有賓主也無。

僧が師に質問した、両堂の首座には主人と賓客との違いはあったのでしょうか、と。


師云、賓主歷然。

主人と賓客との差は歴然としているではないか、と師は答えた。


師云、大衆、要會臨濟賓主句、問取堂中二首座。

さらに師は言った、諸君、この主人と賓客の言葉の意味を理解しようと思うのなら、堂中にいる二首座に聞いてみればよい、と。


便下座。

そしてすぐに座から下りた。

 

臨在は、時には喝を、時には棒を使って人々を導きます。

修行僧に対しては、時には平手打ちを加えたり、襟首を掴んで振り回したりすることも。

言葉だけではなく、全身を、その存在全体を使って、自分自身の禅を実現しようとします。

それを私たちは、正しく受け継いでいるでしょうか。

虚空に響く鈴の音のように、どこかに遠ざかってしまっていないか、心配なところです。


*****


「臨済録」現代語訳は、全文の推敲を終えたら関連する地図、臨済の生きた時代の年表などと合わせて書籍にする予定です。

 

臨済録原文全文リンク

 

臨済録 原文全文 (暖淡堂書房)

新品価格
¥400から
(2023/1/5 05:45時点)

臨済録 原文全文 (暖淡堂書房)

 

にほんブログ村 ライフスタイルブログ 心のやすらぎへ

  

にほんブログ村 本ブログ 古典文学へ

  

PVアクセスランキング にほんブログ村

暖淡堂の書籍

臨済録<現代語訳> (暖淡堂書房)

新品価格
¥800から
(2024/4/25 21:34時点)

スポンサーリンク

検索

投稿記事一覧

記事のカテゴリー

QooQ