示衆(3)「大德、爾且識取弄光影底人、是諸佛之本源、一切處是道流歸舍處」(諸君、君たちは光と影を弄ぶものの本体を見て取るのだ、それこそ諸仏の本源、すべて諸君ら修行者の帰るべきところである) 「臨済録」より

2023-02-11

古典 臨済録

 

こんにちは、暖淡堂です。

「示衆」の3回目。

臨済は繰り返し、なにかを自分の外に求めるということをするな、と言っています。

修行者、修行僧たちが悩みながら生きているその姿は、現在の私たちと重なって見えます。

臨済が修行僧たちに語りかける言葉は、私たちに語りかけているように聞こえます。

今回の部分から、臨済の説法を聞いている修行僧たちの本質についての説明が次第に深いものになっていきます。

それはまた、私たちの本質でもあります。


臨済は、私たちの本質はどのようなものだと言っているでしょうか。


臨済録の原文全文は以下のリンクからご確認ください。 

「喝!!」の声が戦乱と混沌の世に響いた 臨済の生きた時代


  

大德、三界無安、猶如火宅。

諸君、我々の過ごす欲界、色界、無色界の三界には安らかさなどない、さながら火のついた家のようなものだ。


此不是爾久停住處。

諸君らの長く留まっていられる住処ではない。


無常殺鬼、一剎那間、不揀貴賤老少。

無常という人を殺す鬼は、ほんの一瞬も休むことなく、また貴賤老少を選んだりしない。


爾要與祖佛不別、但莫外求。

もし諸君が祖仏と共にあろうと願うなら、なにかを外に求めるということをするな。


爾一念心上清淨光、是爾屋裡法身佛。

諸君の心にある清浄な光が、そのまま諸君自身の中にある法身仏だ。


爾一念心上無分別光、是爾屋裡報身佛。

諸君の心にある無分別の光が、そのまま諸君自身の中にある報身仏だ。


爾一念心上無差別光、是爾屋裡化身佛。

諸君の心にある無差別の光が、そのまま諸君自身の中にある化身仏だ。


此三種身、是爾即今目前聽法底人。

これら三種の仏身は、今そこでこの話を聞いている諸君自身のことだ。


祇為不向外馳求、有此功用。

外に探し求めるなどということをせずに、すでに立派にはたらきを見せている。


據經論家、取三種身為極則。

祖仏の教えを記した経論を研究する者たちによれば、この三種の仏身は仏法の究極なのだそうだ。


約山僧見處、不然。

私の見るところでは、まったく違う。


此三種身是名言、亦是三種依。

この三種の仏身はただの名前であり、また上辺にかけた三種の衣に過ぎない。


古人云、身依義立、土據體論。

古人も言っている、仏身、仏の身体とは教義によって立てたもの、仏土、仏の拠る所とはその身体によって考えだしたもの、と。


法性身、法性土、明知是光影。

法性の仏身、法性の仏土、これらはただ目に映る光と影だと明らかに知るべし。


大德、爾且識取弄光影底人、是諸佛之本源、一切處是道流歸舍處。

諸君、君たちは光と影を弄ぶものの本体を見て取るのだ、それこそ諸仏の本源、すべて諸君ら修行者の帰るべきところである。


是爾四大色身、不解說法聽法。

君たちの四大色身、つまり、地、水、火、風でできている身体は、仏法を説くことも聞くこともできない。


脾胃肝膽、不解說法聽法。

脾胃肝膽の内臓も、仏法を説くことも聞くこともできない。


虛空不解說法聽法。

なにもない虛空なら、なおさら仏法を説いたり聞いたりなどできないのだ。


是什麼解說法聽法。

では、いったいなにが仏法を説いたり聞いたりできるというのか。


是爾目前歷歷底、勿一箇形段孤明、是這箇解說法聽法。

それはこの目の前にはっきりとしてあり、一つの形体にはとどまらずに独自の明るさを持っているもの、それがこの説法を聞いているのだ。


若如是見得、便與祖佛不別。

もしこのように見てとったならば、君たちは祖仏に他ならない。


但一切時中、更莫間斷、觸目皆是。

どんな時でも、途切れることはなく、目に触れるものも全てそうなのだ。


祇為情生智隔、想變體殊、所以輪回三界、受種種苦。

ただ、情が生まれたら知とは離れ、想が変われば身体とずれてしまう、そうして三界を輪廻し、さまざまな苦を受けている。


若約山僧見處、無不甚深、無不解脫。

私の見るところでは、つまりは、探り得ない究極などなく、成し得ない解脱などない。

 

私たち自身とは、この姿でも、この身体や内臓のことでもありません。

その上に時折ちらつく光、その光を弄んでいるもの、それが私たち自身の本質、本来のもの。

それは清浄であり、分別を超え、差別に捉われない、私たち自身とともにある仏である。

それが理解できたら、解脱です。

そう臨済は言っています。


*****


「臨済録」現代語訳は、全文の推敲を終えたら関連する地図、臨済の生きた時代の年表などと合わせて書籍にする予定です。

 

臨済録原文全文リンク

 

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