示衆(2)「今日多般用處、欠少什麼。」(今日さまざまな現象として目に見えることには、なにも欠けたものなどいないのだ) 「臨済録」より

2023-02-07

古典 臨済録

 

こんにちは、暖淡堂です。

「示衆」の2回目です。


晚參(夜に行われた説法)で始められた講話が、次第に熱を持ったものになっていきます。

ここでは祖師とは、祖仏とは、どんなものであるかを説いています。

修行の目標の姿、修行の到達点ですね。

そして、それを理解できずにあちらこちらとうろついて探し回っている修行僧たちに、そんなことをしても無駄だといいます。

臨済は、祖師、祖仏は、いったいどこにいるというのでしょうか。


臨済録の原文全文は以下のリンクからご確認ください。 

「喝!!」の声が戦乱と混沌の世に響いた 臨済の生きた時代


  

師乃云、今時學佛法者、且要求真正見解。

師はまた、このように言った、今時の仏法を学ぶ者は、なによりも正しい見解を求めるというのが必要だ、と。


若得真正見解、生死不染、去住自由。

もし正しい見解を得たならば、生死に惑わされず、生きるも死ぬも自由になる。


不要求殊勝、殊勝自至。

特別なものを求めなくても、それは自然と向こうからやって来るのだ。


道流、祇如自古先德、皆有出人底路。

諸君、いにしえの師たちは、皆、人を囚われから救い出す方法を持っていた。


如山僧指示人處、祇要爾不受人惑。

私がここで諸君に教えたいことは、ただ他人に惑わされるなということだけだ。


要用便用、更莫遲疑。

必要なところでは力を尽くせ、戸惑ってぐずぐずするな。


如今學者不得、病在甚處。

今学ぶものたちが肝心なところを得られない、その理由はどこにあると思うか。


病在不自信處。

病は、自分自身を信じきれていない、というところにあるのだ。


爾若自信不及、即便忙忙地徇一切境轉、被他萬境回換、不得自由。

自分を信じるということが出来なければ、ただ慌ただしく世の中をうろついて、次々に起こる出来事に惑わされてしまい、自由など得られない。


爾若能歇得念念馳求心、便與祖佛不別。

諸君がそのように自分の外に何かを求めてうろつこうとする思いを断つことが出来れば、その瞬間に諸君は祖仏と同じとなる。


爾欲得識祖佛麼。

祖仏とは何かを知りたいか。


祇爾面前聽法底是。

ただ私の面前で仏法の話を聞いているところの君たちが、そのまま祖仏と異ならないのだ。


學人信不及、便向外馳求。

それなのに仏法を学ぶ者たちは自らを信じ切ることができず、外に向かって答えを求めて走り回っている。


設求得者、皆是文字勝相、終不得他活祖意。

たとえそれで何かを求め得たとしても、それらは皆文字でうまく書かれたものに過ぎず、あの生き生きとした祖仏の意味をつかむことはできずに終わるのだ。


莫錯、諸禪德。

誤ってはならぬぞ、諸君、禅を学ぶ者たちよ。


此時不遇、萬劫千生、輪回三界、徇好境掇去、驢牛肚裡生。

今この時につかみ損ったら、数え切れぬほど生まれ変わったとしても、永遠の輪廻を続けたとしても、環境に引き摺り回されすり減らされるだけで、驢馬や牛の仔として生まれ続けるだけだ。


道流、約山僧見處、與釋迦不別。

諸君、私の見解を一言で言えば、我々と釈迦とは別者ではない。


今日多般用處、欠少什麼。

今日さまざまな現象として目に見えることには、なにも欠けたものなどいないのだ。


六道神光、未曾間歇。

眼、耳、鼻、舌、身、意の六根の働きは、いまだかつて途切れたことはない。


若能如是見得、祇是一生無事人。

もしこのように見てとることができれば、それは一生無事の人である。

 

臨済は晚參に参加している僧たちにいいます。

祖仏とは、今そこにいる諸君そのものだと。

諸君は祖仏と異ならないのだと。


では、どうして僧たちは自身が祖仏であると思えないのでしょうか。

自分を祖仏と同じにしてくれるもの、修行の先を導いてくれるもの、助けれくれるもの、正しい教え、そのようなものを、自分以外の場所で探し続けているのでしょうか。


今の自分、そのままの自分が祖仏そのものである。

そう信じることができないから、いつまでもうろつき続けるのだ。

そう臨済はいいます。


そんなことでは、何度生まれ変わっても成仏できず、また動物の仔として生まれてきてしまうぞ。

自分は祖仏と同じなのだ。

なによりも、そのことを信じなさい。


臨済は繰り返し、そう教え続けます。


*****


「臨済録」現代語訳は、全文の推敲を終えたら関連する地図、臨済の生きた時代の年表などと合わせて書籍にする予定です。

 

臨済録原文全文リンク

 

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