勘辨(4)「瞎漢、佛法說什麼麤細」(どこを見ている、仏法は雑だの細かいだのと説いてなどいないぞ)「臨済録」より

2023-06-10

古典 臨済録

臨済と普化との生き生きとしたやり取り

 

こんにちは、暖淡堂です。

「勘辨」の4回目です。

臨済は普化を伴って施主家の食事に招かれています。

ここで臨済は普化に「神通」について問いかけています。

普化はどのように答えるでしょうか。



臨済録の原文全文は以下のリンクからご確認ください。 

「喝!!」の声が戦乱と混沌の世に響いた 臨済の生きた時代


  

師、一日同普化、赴施主家齋次、師問、毛吞巨海、芥納須彌。

師がある日、普化をともない、施主の家へ斎事に招かれて行った際、普化に問うた、毛は巨海を呑み、芥子粒は須弥山を納めるという。


為是神通妙用、本體如然。

これは神通の不思議な働きなのか、それとも本体そのままの現れなのか、と。


普化踏倒飯床。

それを聞き、普化はいきなり食膳を踏み倒した。


師云、太麤生。

師は言った、なんて雑な答えだ、と。


普化云、這裡是什麼所在、說麤說細。

普化が言った、ここを一体なんの場所だと思って、雑だの細かいだのというのか、と。


師來日、又同普化赴齋。

師は次の日も、普化をともなって斎事に赴いた。


問、今日供養、何似昨日。

師は問うた、今日の供養は、昨日と比べてどうだ、と。


普化依前踏倒飯床。

普化はまた同じように食膳を踏み倒した。


師云、得即得、太麤生。

師は言った、得るには得ているが、まったく雑だ、と。


普化云、瞎漢、佛法說什麼麤細。

普化が言った、どこを見ている、仏法は雑だの細かいだのと説いてなどいないぞ、と。


師乃吐舌。

師はそれを聞いて舌を出した。



 

普化は臨済の問いに対し、いかにも普化らしい答え方をしています。

毛や芥子粒はとても小さいもの。

それに巨海や須弥山が入ってしまうのはどうしてか。

普化は食事の載った膳を蹴り倒します。

翌日も臨済と普化は斎に赴き、同じようなやり取りをします。

食事の載った前を踏み倒して、

「どこを見ている、仏法は雑だの細かいだのと説いてなどいないぞ」

と、普化は言います。

それはまた、臨済が求めていた答えだったのかもしれません。


喝と大声を出したり、棒で打ったり、食膳を蹴り倒したり、禅のやり取りは乱暴なものが目立つようです。

一方で溈山や仰山などの静かな問答もあります。

どちらが正しいということもないでしょう。

あれこれと、ことさらなことはしないでいい。

今、ここ、にそのままの姿であればいい。

そういうことではないでしょうか。


*****


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