勘辨(7)「官馬相踏」(立派な馬同士の蹴り合いだ)「臨済録」より

2023-06-14

古典 臨済録

臨済録原文と現代語訳

 

こんにちは、暖淡堂です。

「勘辨」の7回目です。

臨済のもとを老和尚が訪ねてきます。

そこでのやりとりです。



臨済録の原文全文は以下のリンクからご確認ください。 

「喝!!」の声が戦乱と混沌の世に響いた 臨済の生きた時代


  

有一老宿參師、未曾人事、便問、禮拜即是、不禮拜即是。

ある時、一人の老和尚が師に参じて、挨拶をする前にこう尋ねた、そなたに礼拝するのがよろしいか、礼拝しないのがよろしいか、と。


師便喝。

師はすぐに一喝した。


老宿便禮拜。

老和尚はそこで礼拝した。


師云、好箇草賊。

師は言った、まったくご立派な草賊だ、と。


老宿云賊賊、便出去。

老和尚は賊賊と言い、そのまま出て行った。


師云、莫道無事好。

師は言った、無事でよかったなどとは言わないことだ、と。


首座侍立次、師云、還有過也無。

首座が側に立っていたので、師は尋ねた、このやりとりに過ちはあっただろうか、と。


首座云、有。

首座は答えた、ありました、と。


師云、賓家有過、主家有過。

師は言った、客に過ちがあったのか、それとも主家に過ちがあったのか、と。


首座云、二俱有過。

首座は答えた、どちらにも過ちがありました、と。


師云、過在什麼處。

師は尋ねた、過ちはどちらにあったのか、と。


首座便出去。

首座はそのまま立ち去ってしまった。


師云、莫道無事好。

師は言った、無事でよかったなどとは言わないことだ、と。


後有僧舉似南泉。

後、ある僧がこのことを南泉に尋ねた。


南泉云、官馬相踏。

南泉は言った、立派な馬同士の蹴り合いだ、と。



 

老和尚が臨済に尋ねます。

そなたに礼拝したらよいのか、しないのがよいのか、と。

これはどのような意味の質問だったのでしょうか。

臨済が礼拝に値する段階まで進んでいるのか、それともいまだ不十分な段階なのか。

そういう、臨済を試すような質問だったのでしょうか。

「賊」という言い方がここでも出てきます。

これは普化に対しても使われる言葉。

臨済は、この言葉を、相手の実力を認めた時に使っているようです。

このやりとりを、後に南泉という人物が評します。

「立派な馬同士の蹴り合いだ」と。


*****


「臨済録」現代語訳は、全文の推敲を終えたら関連する地図、臨済の生きた時代の年表などと合わせて書籍にする予定です。

 

臨済録原文全文リンク

 

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